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マウス遺伝子の23%が生存に必須―ヒトの難病克服に貢献も:理化学研究所

(2016年9月20日発表)

 (国)理化学研究所は9月20日、理研が参加する国際共同研究プロジェクトが実験動物マウスの生存に欠かせない遺伝子410個を突き止めたと発表した。調査対象にした遺伝子1,751個のうち23%強に相当、それらの異常がヒトの難病とも深く関係していることを明らかにした。2020年までに2万数千個とされるマウスの全遺伝子を解析し、ヒトの難病克服などに役立てる計画だ。

 今回の研究成果は、2011年に理研バイオリソースセンターなど13カ国の18研究施設が参加して発足した「国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)」の一環で得られたもの。実験動物のマウスを使って、特定の遺伝子が機能しなくなるようにしたノックアウトマウスを作成。その遺伝子がマウスの受精卵からの発生や胎仔への成長、誕生後16週までの子どもにどう影響するかを調べた。

 その結果、これまでに解析した410個の遺伝子が、マウスが受精卵から胎仔や子どもに成長していくのに欠かせない「胎生致死遺伝子」であることがわかった。反対にこれらの遺伝子が機能しないと、正常な臓器や組織を作れない分化異常などで死んでしまう。今回の研究では、これらの遺伝子がヒトの難病に関連する遺伝子と極めて深い関係があることもわかった。

 胎生致死遺伝子の働きを調べるには胎仔の軟組織の解析が不可欠だったが、これまでは軟組織が正常に作られているかを調べるのは難しかった。それに対し今回、IMPCが軟組織でも高精細な画像にできるmicro-CT解析を標準手法として採用、三次元計測などによって軟組織を正確に効率よく解析できるようにした。

 IMPCは10年計画でマウスの全遺伝子の働きを各施設共通の標準解析手法で解明、世界の研究者にその成果を公開する。今後5年かけてマウスの全遺伝子2万数千個についてそれぞれ標準ノックアウトマウスを作成、各遺伝子の働きを調べる計画だ。

 IMPCプロジェクトについて、理研は「遺伝子機能と先天性異常・疾患、さらには老化関連疾患の研究分野の発展に大きく貢献する」と話している。