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金ナノ材料の簡便な合成法を開発―短時間合成やコスト低減、結晶成長方向制御を実現:産業技術総合研究所

(2020年1月29日発表)

 (国)産業技術総合研究所は1月29日、金ナノ材料の簡便な合成法を開発したと発表した。簡単に短時間で金ナノ材料を作れるだけではなく、結晶成長方向を制御したり、ナノシート状の集合体を合成したり、粘土のように成形可能な金ナノ集合体を得たりできる。エレクトロニクス、化学、医療をはじめ幅広い分野での金ナノ材料の利用が期待されるという。

 金ナノ材料は古くからステンドグラスなどに用いられてきたが、近年は導電材料、太陽電池、医薬品、病原体検出センサープローブ、触媒などに用いられている。

 一般的には、金イオンを含む溶液に還元剤を添加し、金イオンを還元して作られるが、サイズを揃えたり、形状の均一性や結晶成長方向を制御するには時間と手間がかかり、コストや環境負荷も大きかった。

 研究グループは今回、コハク酸の誘導体を用いることによって、これらの課題を解決できる新製法を開発した。

 コハク酸の誘導体が金イオンの還元剤として働き、短時間で金イオンを還元できること、また、コハク酸誘導体は、生成する金ナノ材料の分散剤としても作用すること、しかもコハク酸誘導体が形成する二分子膜がテンプレート(型枠)として働き、金ナノ材料の結晶成長方向を制御できることを見出した。

 このテンプレートとしての働きにより、金ナノ材料の結晶成長方向が2次元方向に制御されて、シート状の金ナノ材料、すなわち金ナノシートが生成される。金ナノシートは、金イオンの溶液とコハク酸誘導体の溶液を適切な温度で混合するだけで生成できる。

 得られた金ナノシートを集めた集合体は柔らかく、粘土のように成形可能であり、金粘土として使用することができる。

 従来の金微粒子の合成法では一般に5~12時間の反応時間を要したが、新たな方法では約1.5時間で金ナノシートが得られ、合成の短時間化を実現した。また、新製法で用いる試薬は金イオン以外では1種類のみであり、しかも撹拌が不要な反応なので従来法より環境負荷が低いという特徴があるという。

 今後金ナノシートの用途開拓を進めとともに、任意の形状の金ナノ材料を簡便に作製する方法を開発したいとしている。