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温暖化が進むと中部の山岳で豪雪強まる―スパコンで予測、気象災害の事前準備に:東北大学/気象研究所ほか

(2019年12月16日発表)

 東北大学大学院理学研究科の佐々井崇博助教らの研究グループは12月16日、スーパーコンピューターで大規模な温暖化予測を実施したところ、このまま温暖化が進むと日本海側の中部山岳地帯では、現在より極端な降雪現象の「豪雪」が強まる、との予測を発表した。今後の豪雪対策や気候変動の適応策を進める上で役立てられるのではとしている。気象庁気象研究所、(国)海洋研究開発機構、名古屋大学宇宙地球環境研究所との共同研究による成果。

 (国)海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」を使って、18世期後半の産業革命期から地球の平均気温が「2℃」ないし「4℃」高まった場合に、本州全域と日本海側の豪雪がどうなるかを計算した。地域レベルの詳細な変動がつかめる5Km四方の解像度で、将来おこりうる大規模な気候シナリオを再現した。

 その結果、温暖化が進み気温上昇によって、太平洋側では雪を雨に変えるため豪雪は徐々に少なくなるものの、日本海側では2℃昇温でも4℃昇温の場合でも、豪雪の頻度と強度は現在とほとんど変わらない事が分かった。さらに日本海側に注目して詳細に分析したところ、新潟、長野、富山県にまたがる比較的標高の高い中部山岳地帯では強い豪雪が起こりうると予測された。

 これは温暖化で空気中に含まれる水蒸気が増えて、潜在的な降雪量が増えるために、標高の高い寒冷な地域では上空から地表まで雪が溶けることなく降るようになる。

 日本海側で雪が降る仕組みとは、シベリアから流れ込む寒気(寒波)が、南からの暖かい海水に触れて対流活動が起き、海からの大量の水と熱を吸収し、雪雲が発生する。これが季節風によって列島に運ばれ、高い山にぶつかって日本海側に雪を降らせる。

 一般的にはシベリアから流れ込む寒気は温暖化で温められるために、平均的に弱くなって地上では降雪が少なくなるとみられる。ところが今回の研究では、シベリアからの大きな寒波が来た時には、寒気自体は相対的に温暖化の影響が小さいため、むしろ寒波が強まって強い豪雨の日と一致するようになると予想している。

 これからの豪雪対策としては寒波の動きを常時監視し、大寒波の可能性が出たときは中部山岳地帯で強い豪雪となることを警戒する必要があるとしている。