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アジア太平洋地域におけるCO濃度変動の実態を把握―民間旅客機による10年間の観測データを解析:国立環境研究所ほか

(2018年11月6日発表)

 (国)国立環境研究所と気象庁気象研究所は116日、民間旅客機を利用した10年間の二酸化炭素(CO2)観測データを解析し、アジア太平洋地域におけるCO2濃度の三次元分布などを明らかにしたと発表した。観測の空白域ともいわれるアジア太平洋地域のCO2濃度変動の実態把握や炭素循環の解明につながる大きな成果という。

 民間航空機によるこの観測はCONTRAIL(旅客機を利用した温室効果ガス観測プロジェクト)と呼ばれ、日本航空が運航する旅客機の一部にCO2濃度を連続的に測定できる装置と、大気の自動サンプリング装置を搭載して2005年から実施している。

 2015年末までの10年間に12,000件を超えるフライトから700万点を越えるCO2濃度データを取得、また、成田、羽田、ソウル、上海、香港、台北、デリー、バンコク、シンガポール、ジャカルタなどの空港における上昇・下降時にCO2濃度の鉛直分布データを取得、その取得数は成田で7,000回、バンコクで1,400回、シンガポールで800回などに及ぶ。今回これらのデータをもとにCO2濃度分布の立体構造などを解析した。

 その結果、例えば成田空港上空では、この10年間どの高度においてもCO2濃度は増加しており、どの高度でもCO2濃度が季節的に変化していること、高度が低いほど変動幅が大きいこと、低高度において化石燃料起源とみられる高いCO2濃度がしばしば観測されること、などの特徴がみられた。

 高度約10kmにおける8月のCO2濃度分布をみると、シベリア上空のCO2濃度は非常に低く、アジア大陸、特にインドから中国南部の上空においても低いCO2濃度が観測された。これは陸上植物の活発な光合成活動によるCO2吸収を反映している。

 この低濃度領域はチベット高原の上空を中心に時計回りの高気圧性の循環、いわゆるアジアモンスーン高気圧の内部にとらえられており、夏季を通じ低いCO2濃度の空気が活発に上空に輸送されることなどが分かった。

 アジアモンスーン高気圧が発達する夏季にはデリー上空のCO2濃度は地上の強いCO2吸収と活発な鉛直混合によって地上から上空まで非常に低くなっているが、これを過ぎると地上からCO2濃度は増加し始め、春季に最も高くなっていた。この季節、日本付近上空におけるCO2濃度の変動幅は大きい。これは低気圧の通過に伴ってアジア大陸での化石燃料排出ガスの影響を受けた空気が頻繁に輸送されてくるためと考えられるという。