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超短波長・短パルス幅レーザーを用いて熱影響を回避―極端紫外線レーザーによるガラス回路基板の加工に展望:産業技術総合研究所ほか

(2018年10月19日発表)

 (国)産業技術総合研究所と東京大学、早稲田大学の共同研究グループは1019日、極端紫外線レーザーを用いて熱影響が極めて少ないガラス加工を実現したと発表した。ガラス材料のレーザー加工のメカニズム解明や最適な加工条件の探索などが期待されるという。

 次世代の電子回路基板などの材料として近年ガラスが注目され、レーザーによるガラスの高密度な微細穴あけ加工などのニーズが高まっている。しかし、これまでのレーザー加工技術ではレーザー照射による熱影響で、照射部の境界領域にリムと呼ばれる隆起構造が生成するなど、品質的に問題があった。

 研究グループは、波長が極めて短い極端紫外線で、パルス幅が極めて狭いフェムト秒(10-15秒)の極端紫外線フェムト秒レーザーを用いれば、熱損傷問題を避けられるのではないかと考え、ガラスの基本材料である合成石英を使って加工実験した。

 波長の長い近赤外線を利用した従来の近赤外線フェムト秒レーザーによる加工も実施し、加工特性を比較した。また、波長は極端紫外線だがパルス幅がナノ秒(10-9秒)の、極端紫外線ナノ秒レーザーによってこれまでに得られたデータとも比較した。

 その結果、極端紫外線フェムト秒レーザー加工は他のレーザー加工に比べ、加工特性の重要な指標である損傷閾値(いきち)や有効吸収長で高い値が得られた。レーザー照射によって熱溶解した際に一般に見られるリム構造は認められなかった。また、マルチパルス照射で深掘り加工してもクラックの発生は観測されなかった。

 こうした結果から、極端紫外線フェムト秒レーザーを用いると極めて熱影響の少ないレーザー加工を実現できることが明らかになったという。

 今後は加工メカニズムなどの解明に取り組み、産業ニーズに応じた最適な加工法を見出したいとしている。