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魚摂取と大動脈疾患死亡との関連明らかに―魚を月に1~2回食べていればリスク高くならない:国立がん研究センター/筑波大学

(2018年10月15日発表)

 (国)国立がん研究センターと筑波大学は1015日、魚をほとんど食べないことが大動脈疾患による死亡リスクを増加させ、魚を少なくとも月に12回食べていれば大動脈疾患で死亡するリスクは高くならないことが共同研究で分かった、と発表した。「魚摂取と大動脈疾患死亡との関連を疫学的に示したのは世界でも初めて」と研究グループはいっている。

 大動脈は、人体の中で最も太い血管で、成人は腹部で2025㎜、胸部で2530㎜の太さがあるが、これが裂ける大動脈解離と、「こぶ」のようにふくらむ大動脈溜のことを大動脈疾患と呼ぶ。両方共主に動脈硬化が原因で生じるとされ、ひとたび裂けたり、破裂したりすると医療が進んだ現代でも死に至ることが多いといわれている。

 このため、大動脈疾患を予防することが重要とされ、心筋梗塞と同様に魚が予防に働く可能性があるという事は従前から言われていたが、その科学的エビデンス(証拠)はこれまでほとんど示されていなかった。

 今回の研究は、国立がん研究センターの社会と健康研究センター 井上真奈美部長、筑波大医学医療系の山岸良匡(かずまさ)准教授らの研究グループが集団を観察する方法として知られる「コホート研究」と呼ばれる手法を使って行った。

 コホート研究は、対象者の生活習慣などを調査・観察するため集団(コホート)を一定期間追跡し、疾患の罹患率や死亡率を比較することで、要因と疾患との関連を調べるというもので、今回の研究では36万人以上を対象にした食習慣アンケートの調査結果を解析、魚摂取頻度を、ほとんど食べない、月12回食べる、週12回食べる、週34回食べる、ほとんど毎日食べる、の5つの群に分け、ほとんど食べない群に対する他の群の大動脈疾患死亡リスクを算出した。

 その結果、魚をほとんど食べない群の大動脈疾患死亡リスクは週に12回食べる群より1.9倍高くなることが判明。週12回の群と月に12回、週に34回の群の比較では差がほとんど生じないことも分った。

 魚は、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸を多く含むことから心臓疾患を予防する食品として奨励され、心筋梗塞のリスクを低減させることが知られている。

 研究グループは、今回の結果から「魚を少なくとも月12回食べていれば大動脈疾患で死亡するリスクは高くならないことが分った」と言っている。