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本栖湖の湖底堆積物から富士山の噴火史を復元―未知の2回の噴火見つかる:秋田大学/東京大学/産業技術総合研究所ほか

(2018年10月5日発表)

 南海トラフ東部の巨大地震や地質災害などを調べているベルギー政府出資の国際プロジェクトに協力・参加している秋田大学、(国)産業技術総合研究所、東京大学などの研究グループは105日、富士山の本栖(もとす)湖湖底から採取した深さ4mの堆積物試料をもとに、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元したと発表した。この復元で未知の2回の噴火が見つかったという。

 本栖湖は富士五湖の中で最も深い湖で、最大水深121.6m。湖底には過去1万年以上にわたり干上がることなく連続して地層が堆積している。富士山に吹く主な風、いわゆる卓越(たくえつ)風は西風であり、本栖湖は風上側の北西に位置しているため、本栖湖に堆積しているのは富士山の西側に大きく広がった火山灰である。

 プロジェクトチームは今回、湖底から深さ4mまでの欠落のない堆積物コア試料を取得し、火山灰の堆積状態やその年代などを詳細に調べた。

 その結果、採取したコア試料は約8000年間の連続した記録であることが判明した。火山噴出物質の一種で、主に安山岩や玄武岩質のマグマに由来する多孔質で暗色のスコリア(岩滓(がんさい))が堆積したスコリア層のうちの3枚は、大沢噴火、大室噴火、それと最後の山頂噴火によるものであると判断された。

 従来の研究では、大沢噴火の年代は3400年前頃、大室噴火の年代は3200年前頃、最後の山頂噴火は2300年前頃とされていたが、今回得られた年代モデルによると、それぞれの噴出年代(放射性炭素年代測定で得られる1950年を基点とする年代。表記はcal BP)は3042 cal BP頃,2930 cal BP頃,2309 cal BP頃と推定された。

 また、富士山起源と判断されるものの富士山の既知のどの噴火にも対応しない火山灰層が2枚見つかり、富士山の西側で起きた2回の噴火が新たに分かった。この噴火間隔はわずか約20年と短いものだった。

 富士山の噴火や災害の研究・予測に貴重な成果が得られたとしている。