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家畜受精卵移植用の卵子採取に新器具―作業時間4分の3に効率化:農業・食品産業技術総合研究機構

(2018年9月14日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構とミサワ医科工業(株)などの研究グループは914日、牛などの家畜生産で広く実用化している受精卵移植用の卵子を卵巣から効率よく採取する器具を共同で開発したと発表した。医療・介護分野で使われる市販の携帯型たん吸引器につないで使用でき、注射器を使う従来の手動吸引器に比べ作業時間を4分の3に効率化できる。作業者の負担軽減に役立つという。

 研究グループには宮城県畜産試験場、多治見ETクリニックも参加、開発した器具は9月にミサワ医科工業が5,000円で発売する。

 受精卵移植は雌の家畜の体内や屠畜(とちく)後の雌の卵巣から卵子を採取して体外受精させ、他の雌牛に移植するもので、食肉や採乳用に優れた家畜を増殖させる技術として広く使われている。通常は注射器を用いて卵巣から手動で卵子を吸引するが、適切な吸引圧を維持しながら卵子を採取する作業は熟練を必要とし、一度に多数の卵巣を処理する現場では作業者の負担が大きいことが課題となっていた。

 そこで研究グループは、携帯型たん吸引器を用いることで適切な吸引圧を維持して効率よく卵子を卵巣から吸引、熟練者でなくとも効率よく卵子を採取できる器具を開発した。新開発の器具は携帯型たん吸引器に接続してストッパーを押すだけで卵子の吸引が可能で、卵子採取にかかる時間が短縮できる。

 日本では食肉処理場で雌牛の卵巣から年間約66万個もの卵子が採取され、年間約24,000個の体外受精卵が雌牛に移植されている。このため長時間にわたって多くの卵巣を取り扱わなければならない作業者の負担軽減が課題となっていた。