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抗生物質の新たな耐性遺伝子を4種発見―「スペクチノマイシン」に耐える:産業技術総合研究所ほか

(2018年4月2日発表)

 (国)産業技術総合研究所と北海道大学は42日、共同で抗生物質に耐える遺伝子を探し出す新手法を見つけ、それを使って抗生物質「スペクチノマイシン」に対して耐性(抵抗性)を示す4種の新たな耐性遺伝子を発見したと発表した。チェックした遺伝子は、数万種にのぼる。

 抗生物質は、病原性菌を死滅させる効果を示すことから、細菌感染症の治療薬として広く使われている。

 しかし、病原性菌の中には、死滅を免れることにつながる耐性変異と呼ばれる遺伝子変異を起こして抗生物質耐性を獲得する菌がある。そうした耐性菌を発見するには耐性変異に関する情報の取得が重要で、中でも必要となるのが抗生物質の標的である「リボソーマルRNAγRNA)」と呼ばれるRNA(リボ核酸)の情報。

 多くのバクテリアは、ゲノム(全遺伝情報)上に複数のコピーを持っているため一つのバクテリア内に耐性を獲得した遺伝子とそうでない遺伝子とが混在することがある。そうした一部だけが耐性を持った場合は、一般的に強い耐性を示さず、耐性変異が「潜伏」した状態になる。しかし、そのような潜伏している耐性変異を残らず検出するのは難しく、まだ解析手法が確立されていない。

 γRNAは、生体内で最も多く生産される重要な遺伝子で、産総研はその一種「16SγRNA」の機能解析をする新しい手法をこれまでに開発発表しており、今回その手法が抗生物質耐性を調べるのにも使えることを見つけ、バクテリア由来の16SγRNA遺伝子数万種の中からスペクチノマイシンに対し耐性を示す4種の新たな耐性遺伝子を発見した。

 スペクチノマイシンは、50年以上も前に開発された抗生物質で、臨床応用歴が長く、耐性変異についても多くの研究が行なわれている。そうした長い利用と研究の歴史があるにもかかわらず今回新しい耐性遺伝子が発見されたわけで、産総研は「環境中には数多くの未知の耐性変異が眠っていることを示唆している」と指摘、「この手法はスペクチノマイシン以外の抗生物質にも適用できる」といっている。