道路沿いに生えるセイヨウナタネ―8割近くに除草剤耐性遺伝子:国立環境研究所
(2016年7月7日発表)
(国)国立環境研究所は7月7日、三重県四日市と松阪市を結ぶ国道23号線沿いに生えるセイヨウナタネの8割近くが除草剤耐性遺伝子を持つ組み換え作物(GM)だったと発表した。四日市港で水揚げされた種子が輸送途中にこぼれ落ちたとみられる。GMナタネが急速に拡大すれば在来植物の生育場所が奪われることも懸念されるため、今後さらに調査を続け長期的な生育動向を明らかにしたいとしている。
セイヨウナタネは食用油の原料として広く使われており、日本には発芽可能な状態で毎年200万t以上が輸入されている。このうち約80%は除草剤耐性遺伝子を組み込んだGMであると推定されている。これらが日本の自然環境で急速に拡散すれば生態系への影響も懸念されるとして実態調査を進めた。
今回の調査では、四日市港から松阪市までセイヨウナタネ種子を輸送する主要ルートである国道23号線沿いの5地点を選び、それぞれ1~2kmの調査区域を設定。2009年10月から2013年1月まで毎月1~2回、道路沿いに生育するセイヨウナタネの個体数を数えた。さらに最も繁茂する時期に葉の一部を採取、除草剤耐性遺伝子を含むGM作物であるかどうかを確認した。
その結果、個体数は3月下旬から5月上旬にかけて急速に増加するが、6月に入ると除草作業や道路清掃などの影響で激減、翌年3月頃から回復するというサイクルを繰り返していた。採取した葉の分析からは、全体の75~78%がGMナタネであることがわかり、その多くが輸送途中にこぼれ落ちた輸入種子によるものと考えられるという。
さらに、他の調査区域に比べ約10倍も多いセイヨウナタネが見つかった出雲大橋周辺の調査区域では、道路沿いに泥の詰まった排水ますがあり、そこに生育していることがわかった。調査日ごとに詰まった排水ますの数とセイヨウナタネの個体数を比較したところ、両者の数の変動パターンはほとんど一致していた。
この結果について、環境研は「道路の排水ますの管理がセイヨウナタネの個体数に影響を与えている可能性を示している」と話している。