電圧スピン制御効率の目標レベルを達成―究極の不揮発性メモリーの開発に道開ける:産業技術総合研究所ほか
(2017年12月1日発表)
(国)産業技術総合研究所と(国)物質・材料研究機構、東北大学、大阪大学、高輝度光科学研究センターの共同研究グループは12月1日、電圧制御型磁気メモリーの実用化に求められる電圧スピン制御効率の目標レベルを初めて達成したと発表した。待機電力が不要で、駆動電力が小さい究極の不揮発性メモリーの開発に道を開く成果という。
次世代IT社会ではCPUやメモリーなどの消費電力の大幅な低減が必要とされており、電流ではなく電圧で情報を書き込む、駆動電力の小さな不揮発性メモリーの開発が浮上している。
そうした中で、金属磁石薄膜の磁化の向き易い方向、いわゆる磁気異方性を、電圧をかけて制御する電圧スピン制御は、不揮発性固体磁気メモリー(MRAM)の駆動電力を低減するキーテクノロジーとして注目されている。
研究グループは、これまで実験に用いていた鉄コバルト系合金に代わり、今回、鉄に低濃度のイリジウムを添加した鉄イリジウム(FeIr)合金を作製、これを用いて超薄膜磁石を作り、垂直磁気異方性と電圧スピン制御効率を調べた。
その結果、実用上求められる垂直磁気異方性を保ちつつ、電圧スピン制御効率が従来よりも約3倍高効率化することが認められた。つまり、垂直磁気異方性と電圧スピン制御効率の双方で実用化に向けた性能目標が達成された。
研究グループは今後、鉄イリジウム合金の量産技術を開発するとともに、電圧スピン制御効率を一層向上させ、実用化に結び付けたいとしている。