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体に有害な活性酸素を除去できるマイクロマシンを作製―たんぱく質だけ使って実現:産業技術総合研究所

(2017年11月17日発表)

 (国)産業技術総合研究所は1117日、体に有害な活性酸素を除去できる「たんぱく質マイクロマシン」を開発したと発表した。活性酸素がもたらす炎症性疾患の新たな治療法の開発などへの貢献が期待できるという。

  通常の酸素が化学反応を起こしやすい形に変化した活性酸素は炎症を引き起こし、さまざまな病気をもたらす。

 たんぱく質を原料に用いて新たな機能性材料の創製に取り組んでいる産総研の研究グループは、今回、生体への悪影響の大きい過剰な活性酸素をたんぱく質を用いて除去する研究に取り組み、高機能なマイクロメートルスケールの構造体であるたんぱく質製のマイクロマシンを開発した。

 作製したのは、活性酸素を除去するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)というたんぱく質と、さまざまな薬剤と結合する血清アルブミン、標的細胞を補足する抗体の3種類のたんぱく質を組み合わせて作り上げた構造体。

 構造体の表面に規則的に配列された抗体が、活性酸素を分泌する細胞を補足し、構造体内部のSODが過剰な活性酸素を除去する。また、構造体に結合した抗炎症薬の放出により、細胞の活性酸素生成を抑制する機能も持つ。

 たんぱく質は生体構成物質であり、生体適合性などに優れるが、分子構造が変化しやすく壊れやすいため、たんぱく質を部品としてマイクロマシンを組み立てることは難しかった。

 研究グループはたんぱく質の構造、機能の維持や安定化、抗体の配向制御などに工夫を加え、乾燥状態にも耐えられる強さと高度な機能を備えた、たんぱく質製マイクロマシンの作製に成功した。

 これをきっかけにたんぱく質を使った安心・安全・高機能な医療用デバイスの開発の進展が期待されるとしている。