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北アルプス北端の5万分の1地質図を作成―日本列島の成り立ちを知る上で重要な地域:産業技術総合研究所/名古屋大学

(2017年8月28日発表)

 (国)産業技術総合研究所と名古屋大学は828日、日本列島の成り立ちを知る上で重要な地域の一つとされる北アルプス北端を含む5万分の1の地質図を作成、9月から委託販売を開始すると発表した。これによって北アルプス全体の5万分の1地質図が地質調査の困難な一部の地域を除いてほぼ完成したことになる。

 地質図は、植生や土壌の下にある地層や岩石の様子を表した地図。

 その情報によって地盤の状態や活断層の位置をはじめ、石炭、天然ガス、温泉、地熱といった地下資源の有無、火山活動の歴史などが分かることから国土の基本情報として幅広い分野で利用され、産総研の地質調査総合センターが刊行している。

 その一つ5万分の1地質図は、日本列島を約1,300の地域に分割して地域ごとに地質調査を実施し、得られた調査結果をまとめたもので、非常に詳細な地質情報が記載されている。

 今回作ったのは、富山県東部から新潟県西部にかけて位置し日本海に面している泊(とまり)地域の5万分の1地質図で、通称北アルプスと呼んでいる飛騨山脈の最北部を含んでいる。

 北アルプスは、富山県、新潟県、岐阜県、長野県にまたがる3,000m級の山々が連なった山脈で、約350万年前に始まった東西短縮地殻変動により隆起してできたと考えられ、今も隆起が続いている。

 その北アルプス最北部が含まれる泊地域周辺は、日本の地質体が形成され始めた約5億年前の古生代初期から現在までの地質が見られる数少ない地域として知られ「地質の宝庫」と呼ばれている。

 しかし、泊地域周辺は、急峻(きゅうしん)な山が多く、しかも豪雪地帯なため、詳細な地質調査を行うのが難しく、これまで20万分の1地質図しかなかった。

 産総研と名大は、2010年から泊地域の調査を開始し、深い谷が続いて近づくのが非常に困難な奥地にまで入って調査を行い5万分の1地質図を完成させた。

 産総研は、日本全国の地質情報を継ぎ目なく(シ-ムレス)表示した20万分の1地質図をウェブサイト上で公開しているが、その改訂の際今回の地質図情報を反映させていくことにしている。