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農業用水路の劣化を簡単、低コストに測定:農業・食料産業技総合研究機構

(2017年8月22日発表)

 (国)農業・食料産業技総合研究機構 農村工学研究部門は822日、コンクリートで作られた古い農業用水路を補修した後の劣化状況を、簡単に低コストで測定する新手法を開発したと発表した。

 農業用の基幹水路は鉄筋コンクリートでできている。深部の鉄筋はコンクリートがアルカリ状態だと腐食しにくい。

 だが、古くなると水路の内面が磨耗して凹凸が生じ、コンクリートの中性化が内部にまで及ぶと鉄筋は腐食し、壊れやすくなる。

 その前に水路内面の補修をかける長寿命化対策が必要になる。補修は凹凸が生じた表面を厚さ10mm程度のセメント系材料で被覆する。

 ところが10年近く経つと、被覆された表面から再び中性化が進行する。それを簡単、低コストで見つける技術がなかった。

 農研機構が開発した「コアビット法」は、電動ドリル(直径10mm)で壁面を斜めに薄く切削し、三日月型の小さな溝を作る。そこにフェノールフタレイン溶液を噴霧する。酸性は無色で、アルカリ性では赤紫色を示すため、一目でアルカリ化の進んだ部分が見分けられる。

 溝の深さは数mm程度でコンクリート面への損傷も小さく、調査跡の補修も簡単。1か所あたりの測定時間は3分程度で、コストは約5,000円。

 全国の農業用水路の総延長は約40kmで、そのうち基幹的な水路は約5kmある。再び補修時期を迎えるものが急増するだけに、簡単でコストが安い対策が急がれていた。