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東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」の予測に成功:国際農林水産業研究センター/九州大学

(2017年7月27日発表)

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フタバガキ科樹種の開花結実
出典:JIRCASウェブサイト(https://www.jircas.go.jp/ja/release/2017/press07)

 (国)国際農林水産業研究センターと九州大学などの研究チームは、東南アジアの熱帯雨林で見られる一斉開花現象を予測するモデルを開発したと727日に発表した。ラワン材として知られるフタバガキ科の結実期は予測が不可能で、樹木の再生産や森林生態保全から解明が急がれていた。マレーシアのマラヤ大学、マレーシア森林研究所、マレーシア工科大学、首都大学東京、高知大学、広島大学、森林総合研究所が研究に加わった。

 東南アジアの熱帯雨林では、フタバガキ科の樹木やマメ科、クスノキ科などの樹種が不定期的に、森林ごとに一斉に開花し結実するという珍しい現象が数年に一度起きている。

 しかし一斉開花がどの森林で、いつ起きるかの予測が全くできず、種子を保存できないことから計画的な苗木生産が不可能で、ラワン材の安定生産や動植物の森林生態系の保全のための大きな手がかりを欠いていた。

 研究グループはマレーシア半島部で約4年間にわたり、フタバガキ科の2つの樹種の開花を長期観察し、葉と芽に注目して開花形成に必要となるたんぱく質の開花遺伝子(FT遺伝子とLFY遺伝子)の発現量を調べた。この間に2回の一斉開花が現れ、いずれも開花の1か月前に葉と芽の両方で開花遺伝子の発現が始まることを突き止めた。

 一方で測候所の降水量や気温データを付き合わせ、開花遺伝子の発現量との関係を調べた結果、一定の乾燥状態と低温状態(9日間の平均気温が25.7℃以下、1日の降水量が182mm以下)がセットで起きた時だけ、9週から11週間後に開花遺伝子が発現し、一斉開花するという微妙なタイミングが明らかになった。

 遺伝子を発現させる引き金の気象条件と準備期間が明らかになったことで、一斉開花の有無を降水量と気温のデータから予測が可能となった。開花が「起きない」ことも予測しているため信頼性が高いと見ている。