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次世代メモリー「ReRAM」の書き換えばらつきの抑制に成功―素子動作の精密制御と高機能化に道:筑波大学

(2017年6月5日発表)

 筑波大学は65日、パナソニックセミコンダクターソリューションズ(株)と共同で次世代の不揮発性メモリーとして最も有望視されている「ReRAM(アールイーラム)」の書き換え時に生ずるばらつきの抑制に成功したと発表した。

 電源を切ってもデータが消えない不揮発性メモリーとしては、フラッシュメモリーが広く使われているが、次世代のより高速で低消費電力の不揮発性メモリーの最も有力な候補として浮上してきているのがReRAM

 ReRAMは、金属の酸化物を電極で挟んだシンプルな構造の抵抗変化型メモリーで、金属酸化物の薄膜にパルス電圧を加えることで大きな抵抗変化を生じさせ「0」と「1」を記憶するという仕組み。フラッシュメモリーのアクセス速度は、DRAMより3桁以上も遅い。それに対し、ReRAMの読み出し時間は、そのDRAM並みと早い上、低消費電力で、構造が単純なことから高密度化も容易、などといった非常に優れた特徴を持っている。

 このため、世界各国で研究開発が行なわれ、たとえば今年の5月米国で開かれたIEEE(米国電気電子学会)主催の国際メモリーワークショップ「半導体メモリー技術の研究開発に関する国際学会」では発表論文の40%ReRAMに関するものだった。

 我が国でも研究が進み、パナソニックなどが既に製品化している。

 そうした中、筑波大とそのパナソニックの半導体部門であるパナソニックセミコンダクターソリューションズは、共同で今回ReRAMに生じる現象である書き換えばらつきを抑制することに成功した。

 ReRAMは、素子中にナノスケール(1ナノメートルは10億分の1m)で形成したフィラメント(線)の電気伝導度を制御することでオン・オフ状態を切り替えて書き換えを行う。

 ところが、その際にイオンや酸素欠損の移動を伴うため、書き換え毎に原子スケールでの構造が異なり、それによって書き換えばらつきが発生する。このばらつきが大きくなると、オン・オフ状態の抵抗比が悪化して信頼性が低下してしまう。

 書き換えばらつきは、自発的に増減を繰り返すことがあり、それをリフレッシュ現象と呼んでいるが、共同研究ではフィラメントのリフレッシュ現象のメカニズム考察を行い、その結果に基づいて、ばらつきが大きくなる前に人為的にリフレッシュを導入することにより、ばらつきの抑制に成功した。