不安で起きる呼吸異常―原因となる脳神経回路解明:筑波大学
(2024年11月21日発表)
不安や恐怖を感じると胸はドキドキ、呼吸は早くなる。筑波大学は11月21日、体にこうした変化を引き起こす脳の神経回路を解明したと発表した。ストレスを受けると活性化する脳の外側手綱核(がいそくたづなかく)と呼ばれる領域を電気的に刺激すると、ドーパミンなどの神経伝達物質を介して呼吸が早まることを動物実験で突き止めた。ストレスで呼吸運動を変化させる神経回路の解明は、過換気症候群などの呼吸調節異常の理解や治療法開発につながるという。
筑波大学医学医療系の小金澤 禎史准教授と後期博士課程の水上 璃子さんが注目したのは、外側手綱核と呼ばれる脳幹の一部。麻酔で眠らせたラットでこの部位を電気的に刺激・興奮させたとき、呼吸運動がどう変化するかを調べた。その結果、ラットがストレスを受けたときと同様に呼吸運動の頻度や量が増えることが分かった。
さらに、このときドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質がどう関与するかについて解析を試みた。これらの神経伝達物質がうまく働かないようラットにドーパミン阻害薬やセロトニン拮抗薬を投与して変化を調べた。その結果、通常ならストレスを受けたときに誘発される呼吸運動が強く抑制されたり、反対に増強させたりすることができた。
さらに外側手綱核によるこれらの呼吸運動の制御が、脳の中でどのように仲介されているかについても解析した。その結果、外部からのストレスで刺激を受けた外側手綱核が活性化し、神経細胞を介して呼吸応答を制御している可能性があることを突き止めた。
研究チームは今後、ストレス性の呼吸応答を引き起こす神経回路をより詳しく調べ、過換気症候群などの原因となる神経系の異常を予防・治療する方法の開発につなげたいとしている。