小さなトマト「マイクロトム」のゲノム明らかに―難解読領域の塩基配列解読に成功:かずさDNA研究所/筑波大学ほか
(2024年7月19日発表)
(公財)かずさDNA研究所などの共同研究グループは7月19日、小さなトマトの一種「マイクロトム」のゲノム(全遺伝情報)を解読したと発表した。マイクロトムは、スーパーなどの店先に並ぶ市販のミニトマトよりももっと小粒の鑑賞用として開発されたトマト。研究に使う実験用の植物として広まっているが、「これまで解読しきれていなかった難解読領域の塩基配列をほぼ完全に解読することができた」といっている。この研究成果は、国際学術雑誌「DNA Research」と、「Plant Biotechnology」にそれぞれ6月4日と7月19日にオンライン掲載された。
トマトは、ジャガイモなどと同じナス科の植物。マイクロトムは鑑賞用として1980年代に米国で開発された新顔のトマトで、日本へは1990年代になってから入ってきた。高さが20~30cmにしかならず、室内でも育てられる。
狭い面積で多数栽培でき、ライフサイクルが短く、種子を播いてから次の世代の種子を得るまでの世代時間が3~4ケ月程度と普通のトマトより短いことから、研究用のバイオリソース(生物遺伝資源)として世界的に注目されている。
日本でも文部科学省が取り組んでいるナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)でマイクロトムの変異体数千系統が公開されトマトの研究などに使われている。
今回の共同研究には、かずさDNA研と筑波大学、大阪公立大学、(国)国際農林水産業研究センターが参加、先ず米国、フランス、ブラジル、日本から集めた6つの系統のマイクロトムについて遺伝的な違いを調べた
次いで今研究のメインテーマであるマイクロトムのゲノム解読に挑戦した。解読には、最新の「ロングリードDNAシークエンス分析技術」と呼ばれる方法を使った。
この分析法は。ゲノムの長いDNA断片を1塩基毎に読み取れるのが特徴で、これによってこれまで解読しきれていなかった難解読領域の塩基配列を読み取れるようにすることに成功した。
これによってマイクロトム研究の精度がより高まってこれまで明らかにされていなかった遺伝現象などが説明できるようになるのではと研究グループは期待している。