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天敵昆虫で害虫を長期にわたり防ぐことに成功―クリ栽培の難敵発生を40年間も抑える:農業・食品産業技術総合研究機構 

(2025年5月15日発表)

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天敵寄生蜂・チュウゴクオナガコバチ成虫。
虫こぶを見つけて内部にいるクリタマバチ幼虫体表に産卵し(外部寄生)、ふ化した幼虫が食い殺す。©農研機構

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は5月15日、中国からの天敵寄生蜂(てんてききせいばち)をクリ栽培の難敵である害虫の「クリタマバチ」に1回導入することで約40年間にもわたってクリタマバチの発生を抑制し続けることができたと発表した。その天敵寄生蜂の名は「チュウゴクオナガコバチ」。化学農薬などでは対応しきれない害虫に対し天敵寄生蜂が長期にわたって有効であることを科学的調査で明らかにした。

 天敵寄生蜂は、害虫に寄生してその害虫を殺す働きを持つ蜂のこと。一方のクリタマバチは、1940年代に中国から日本に入ってきた害虫で、クリの樹の新芽に産卵し、ふ化した幼虫の生育が急速に進む時期になると枝に虫こぶと呼ばれるこぶを多数付け、一生のほとんどを虫こぶの中で過ごす。このため、農薬を散布しても虫こぶの内部にまで届かず、虫こぶが多数作られると樹勢が弱って減収や枯死に繋がり、過去にはクリが分布していない沖縄県を除く日本全国に広まった。

 こうした中で農研機構は、クリタマバチによる被害を抑える手段として天敵寄生蜂の「チュウゴクオナガコバチ」に着目、1982年春から茨城県つくば市の農研機構敷地内で国内初の本格的な放飼(ほうし)を開始した。

 今回の研究は、それ以来約40年間にわたって実施し続けてきた継続的な放飼結果を用いて天敵放飼地点のクリタマバチ密度と天敵密度を指標にして各々の数の年次変化を解析した。

 その結果、クリタマバチの密度変動に連動するように速やかに天敵の密度が変わり、クリタマバチが天敵に長期的に制御され、それが1982年の放飼開始からおよそ40年間余りにもわたって続いていたことを確認した。

  研究にあたった果樹茶病害虫防除研究領域の屋良 佳緒利(やら かおり)上級研究員は「天敵放飼当時、私はこのような虫達がいることもクリが大被害を受けていることも知らない中学生でした。今後、もし新たな侵入害虫が問題になった場合にもこの成果は役立つと思っています」と話している。

(左図)栗の害虫とされる、クリタマバチ成虫。初夏にクリの新芽(休眠芽)に産卵する。
(右図)クリタマバチにより形成された虫こぶ。ふ化幼虫の生育が急速に進む翌春に虫こぶができる。
©農研機構