[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

高性能磁石実現へ―シミュレーション技術開発:物質・材料研究機構ほか

(2024年3月6日発表)

 (国)物質・材料研究機構と筑波大学は3月6日、高性能磁石として知られるネオジム磁石の性能を物理的限界にまで高める技術を開発したと発表した。電子顕微鏡でとらえた磁石の微細組織と性能の関係をコンピューター上に再現、高性能化の壁になっている原因の究明に道をひらいた。電気自動車や風力発電に欠かせない永久磁石の高性能化に役立つと期待している。

 永久磁石の強さを示す指標の一つである保磁力は、外部から逆方向の磁場をかけた時に磁石の磁力をゼロにする磁場の強さを指す。ネオジム磁石はこの保磁力が最も大きいことで知られているが、今のところ物理的に想定される限界値よりもはるかに下回っているのが現状だ。

 そこで研究グループは、ネオジム磁石の表面をイオンビームで厚さ20nm(ナノメートル、10万分の2mm)ずつ研磨しながら電子顕微鏡で観察、微細組織に関する多数の二次元画像データからネオジム磁石の高品質な立体構造を再現した。さらにこの結果から、ネオジム磁石の保磁力が微細組織によってどのように変化するかを、コンピューターで精度よく再現できるようにした。

 この手法によって、ネオジム磁石で実際に起きている現象とその微細組織の特徴を関連付けることができるようになり、極限の磁石特性を達成するために必要な微細組織の因子を示せるようになったという。

 今回の成果について、研究グループは「究極の保磁力を目指してネオジム磁石の微細組織をどのように最適化すればよいのかという指針を示してくれる」と話している。