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動作アシスト機器の効果を検証するラット実験モデル:産業技術総合研究所ほか

(2017年1月12日発表)

 (国)産業技術総合研究所は1月12日、筑波大学、大阪大学と共同で身体の動きを補助する動作アシスト機器の効果を検証するためのラット(ネズミ科の動物)を使う動物実験モデルを開発したと発表した。

 さまざまなアクチュエーター(作動装置)を利用して身体の動きを補助する機器のことを動作アシスト機器という。ラットのような小動物で動作アシスト機器の効果を評価できる動物実験モデルはこれまでなかった。

 近年はロボット技術を応用した動作アシスト機器を用いるリハビリテーション技術への期待が高まりその研究開発が官民で活発化している。例えば、経済産業省と厚生労働省は、平成25年度から共同で「ロボット介護機器開発5カ年計画」として高齢者や介護現場の具体的なニーズをふまえて介護者のパワーアシストを行う機器開発を民間企業や研究機関と進めている。

 こうした中で産総研は、ニューロサイエンス(神経科学)の研究で明らかになった脳の理論などの知見をリハビリテーション医療に応用するより高度なニューロリハビリテーション技術の研究開発に取り組んでいる。今回その一環として共同研究により動作アシスト機器による運動機能補助効果を検証するためのアクチュエーターによって強制的に応答動作を起こさせるラット学習実験モデルを開発した。

 仕組みは、装置の前面に左右2本のレバーがあってそのレバーをラットが2本の前足で同時に押し下げた状態になった後、どちらか一方の前足にランダムに空気を吹きかける空圧刺激を与える。刺激に対して正答となる前足を持ち上げてレバーから離せば報酬が得られ、違う前足をレバーから離すと誤答となり報酬が得られなくなるという方式。アクチュエーター利用の一種の動作アシスト機器と考えることができ、学習効果を調べられる。

 産総研は、今後この実験モデルを半身に麻痺が生じているラットに適用して動作アシスト機器を用いたリハビリテーション過程の神経メカニズムを解明しニューロリハビリテーション研究に役立てていきたいと考えている。