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環境中の低濃度ウイルスを検出できる高感度センサー開発―ウイルス感染症の拡散の未然防止に貢献:産業技術総合研究所

(2016年12月19日発表)

 (国)産業技術総合研究所は12月19日、夾雑物(きょうざつぶつ)を含む下水処理水中のごく少量のウイルスを、夾雑物を取り除かなくても高感度で検出できるバイオセンサーを開発したと発表した。既存の技術では検出が困難だった環境中の微量のウイルスを簡便に検出できることから、ウイルス感染予防への貢献が期待できるという。

  ノロウイルスや鳥インフルエンザウイルス、エボラウイルスなど各種ウイルスが国境を越えて拡散しており、感染が広がる前に環境中の極微量ウイルスを検出して感染症を未然に防ぐ対策などが求められている。

  高感度なウイルスセンサーの開発に取り組んでいる産総研の研究グループは今回、検出対象のウイルスに磁気微粒子と光散乱微粒子の2種類の微粒子を付着させ、検出対象のウイルスを、磁力で動き近接場光で光る、いわば「動く光点」とする技術を案出し、これによって極少量の低濃度ウイルスを高感度に検出する技術を開発した。

  実験では、都市下水の二次処理水200μl(マイクロリットル、1μlは100万分の1l)にノロウイルス様粒子約80個を混ぜた試料を用い、検出性能を調べた。その結果、磁気微粒子が付着したノロウイルス様粒子は磁力によって動くが、センサー表面上にある多くの夾雑物は動かないことから、両者のこの違いによりウイルス様粒子を明確に識別・検出できることを確認した。

 イムノクロマトグラフィー法や酵素結合免疫吸着法といった従来のウイルス検出法に比べ、検出可能濃度は3~5桁低く、いわば数桁高い感度でウイルスを検出できることがわかった。センサーを洗浄する手間もかからず、利便性も備わっているという。

  近く、片手で持ち運びできる試作機を完成させ、ウイルスをはじめとした微量バイオ物質のセンサーシステムとして実用化を目指したいとしている。