小惑星リュウグウの可溶性有機物質を分析―試料中に約2万種の有機分子見つかる:宇宙航空研究開発機構
(2023年2月24日発表)
(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月24日、小惑星探査機「はやぶさ2」が2020年12月に地球に持ち帰った小惑星リュウグウの試料の可溶性有機物分析結果を発表した。試料を溶媒抽出し質量分析したところ、炭素、水素、窒素、酸素、イオウを含む組成から成る有機分子約2万種が見つかったという。
クロマトグラフィーを用いた物質分析では、アミノ酸やカルボン酸、アミンのほかに芳香族炭化水素類などが検出された。特に、メチルアミンや酢酸のような揮発性の高い小さな有機分子が存在しており、このことは、リュウグウ表面でこれらの分子が塩として安定して存在していることを示しているという。
地球生命が用いるアラニンなどのタンパク性アミノ酸と、イソバリンなどの非タンパク性アミノ酸が見つかったが、左右構造を持つアミノ酸が1:1の割合で存在しており、これらアミノ酸は非生物の合成プロセスで作られたものであることが示された。
炭化水素としてはアルキルベンゼンや多環芳香族炭化水素であるナフタレン、フェナントレン、ピレン、フルオランテンなどが主に存在した。これらの存在パターンは地球上の熱水原油のパターンと似ており、リュウグウ母天体上で水の影響を受けていたことが示唆された。
リュウグウは小惑星帯で最も多いC型小惑星に属し、炭素質コンドライト隕石のような含水鉱物に富んでいる。始原的な炭素質コンドライトにはアミノ酸を含む様々な可溶性有機分子が存在することが知られており、生命の誕生につながる前生物的有機分子を初期の地球や他の天体に供給した可能性があるという。
最初のタッチダウンサンプリングで得られたリュウグウ表面試料に含まれる有機分子の分析によって今回検出された種々の有機分子は、リュウグウ表面から放出されて他の天体に運ばれた可能性が想定されるとしている。