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軽金属に代わる耐熱・高強度複合材を開発―エンジニアリングプラスチックに炭素ナノ繊維を添加し実現:新エネルギー・産業技術総合開発機構/単層CNT融合新材料研究開発機構/産業技術総合研究所

(2016年11月7日発表)

 技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構と(国)産業技術総合研究所は11月7日、電気製品や自動車、航空宇宙部品などに広く用いられているスーパーエンジニアリングプラスチックのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を加え、PEEK材としては世界最高水準の耐熱性と機械強度を持つ「PEEK/SGCNT複合材料」を開発したと発表した。アルミなどの軽金属材料に代わる新たなスーパーエンジニアリングプラスチックとして飛躍的な利用拡大が期待できるという。

 PEEKは耐熱性、耐疲労性、耐環境性、難燃性に優れ、金属に比べて軽く、溶融成形が可能なことから先端材料として広く用いられているが、耐熱性などを向上させることによって適用範囲をさらに拡大することが求められていた。

  その実現には単層カーボンナノチューブ(SGCNT)をPEEKに混入すると有効なことが近年分かってきたが、それにはSGCNTをできるだけ均一に、かつ一本一本孤立に近い状態で高分子材料中に分散させる必要がある。

 ところが、有機溶媒にSGCNTを分散し、これに高分子材料を溶解させて複合材料を得るという一般的な製法はPEEKには使えず、この問題の解決が課題になっていた。

  研究グループの単層CNT融合新材料研究開発機構は今回、SGCNTをPEEK中に連続的に解繊し分散するという超高分散技術を開発、これを用いることによって目標の性能を得ることに成功した。

 試験の結果、耐熱性については、450℃で2時間保持した場合、熱分解によって生じる重量変化の率がPEEK単体では-18%(マイナスは減少を示す)だったのに対し、SGCNTを5%添加したPEEK/SGCNT複合体では-0.5%と、ほとんど熱分解せず安定だった。

  機械的特性については、5%添加材で引っ張り強度がPEEKの約1.2倍、曲げ強度が約1.8倍あった。また、この複合材料はPEEKと同様に射出成形により様々な形状の成形が容易にできることが確かめられた。

 軽金属に代わって自動車、航空宇宙産業などでの広範な利用が期待できるとしている。