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山野のシカの増減でクマの食生活はどう変わる―長期にわたる調査行い明らかに:東京農工大学/森林総合研究所ほか

(2022年4月26日発表)

 東京農工大学、(国)森林総合研究所などの国際共同研究チームは4月26日、山野のシカ(ニホンジカ)の増減でクマ(ツキノワグマ)の食生活がどう変わるかを明らかにしたと発表した。

 シカにとってクマは、いわば“天敵”。クマは雑食性で主食は植物だがシカなどの哺乳類も食べていて、山野に生息するシカが増えるとクマの食物(たべもの)に占めるシカの割合が増えることが報告されている。しかし、逆にシカが減少するとクマの食性(食べ物の種類や食べ方)にどんな影響が生じるのかは分かっていない。

 共同研究はそれを解明しようと行ったもので、ノルウェ-のサウスイーストノルウェー大学と、東京農業大学が加わった。

 日本のシカによる樹木など植物の食害は深刻な状況にある。林野庁の発表によると野生鳥獣による森林の食害面積は、全国で約6,000ha(ヘクタール、1haは1万㎡)にのぼり、中でもシカによる食害は最も多く、全体の約7割(2020年度)を占めている。

 こうしたことから、近年は全国的にシカの駆除が進み、生息数が減ってきている地域もでているが、生息数が減少に転じると、クマの食性がどのように変化するかは明らかにされていない。

 そこで、国際共同研究チームは、シカの生息数の変化と、雑食動物のクマの食性との関係を東京都奥多摩町の北部を対象にして、1993年から2014年までの長期にわたって調べ①シカの生息数が低密度だった時期、②増えて高密度になった時期、(③再びシカが減った中密度の時期、のそれぞれについてクマの食性がどのように変わったかをクマの糞(ふん)を分析することで明らかにした。

 調査は、それぞれの時期とも夏と秋に糞を採取して含まれている内容物を分析するという方法で行った。

 すると、シカの生息数が少ない時期にはシカの成分が含まれたクマの糞の割合が極めて低くシカをほとんど食べていないこと、高密度の時期になるとシカを含んだ糞の割合が急激に増え、その後シカの生息数が減って中密度の時期になるとシカを食べたクマの糞は減少することが分かった。

 研究チームは、この長期にわたる調査で得られた結果の解析から「この地域(東京都 奥多摩町の北部)に生息するクマは、シカの生息数の変化に合わせてシカを食べる割合を変化させていると考えられる」という結論が得られたとしている。