食物繊維多く摂ると要介護認知症の発症リスクが低下―多くの人を対象にした調査研究で明らかに:筑波大学
(2022年2月10日発表)
筑波大学医学医療系ヘルスサービス開発研究センターの山岸良匡(やまぎし かずまさ)教授らの研究グループは2月10日、食物繊維を多く摂る人は要介護認知症の発症リスクが低下する可能性があることが分かったとする調査結果を発表した。4千人近くの対象者を長期にわたり追跡観察して得た。中年期に食物繊維を多く摂ると高齢期になってからの要介護認知症の発症リスクが低下する可能性があることを世界で初めて明らかにしたという。
認知症は、たんぱく質の一種アミロイドβ(ベータ)が脳の神経を破壊することで起きるとみられている病気。内閣府の2017年版高齢社会白書によると日本の認知症高齢者数は、462万人(2012年)にのぼる。
だが、近年、認知症の研究は格段に進歩し、進行する前に対策を進めれば予防できることが分かってきている。
食物繊維は、穀類、イモ類、野菜、果物などに多く含まれている栄養成分の一つ。最近は腸内細菌に影響を与えていることが分かり、認知機能にも関与している可能性のあることが実験などで示されている。
しかし、実際に多くの人々を対象にして、食物繊維の摂取量と日常生活に支障が生じる要介護認知症との関連を調べた研究はこれまでなかった。
今回の研究は、それを明らかにしようと秋田県、茨城県、大阪府の3地域の住民で、健康診断時の栄養調査に参加した40~64歳までの3,739人を対象にして1999年から2020年までの21年間にわたって追跡調査した。
分析は、調査対象者にそれぞれが24時間さかのぼって食べた前日の食事を思い出してもらい全て聞き取り記録する「24時間思い出し法」と呼ばれる食事調査法で得た情報をもとに食物繊維摂取量を計算し、その摂取量の多さに応じて対象者を4つの群に分け、下位25%の群を基準にして他の3つの群の要介護認知症リスクを算出するという方法により行った。
その結果、25~50%の群、50~75%の群、および上位25%の群の3つの群では、要介護認知症の発症リスクが下位25%の群のそれぞれ0.83倍、0.81倍、0.74倍と低くなり、食物繊維摂取量が多いほど要介護認知症の発症リスクが低下する傾向があることが分かった。
認知症については不明なことが多く残されているが「食物繊維の摂取が多いほど要介護認知症の発症リスクが低くなることが世界で初めて疫学的に示された」と研究グループは話している。