目には見えない超微細な粗さをつけることで空気抵抗をほぼ半減
将来は超低燃費の旅客機が実現か!?
(2026年6月01日)
東北大学流体科学研究所の焼野 藍子(やけの あいこ)准教授らの研究グループは、流線型模型の表面に目に見えないほど微細で不規則な粗さ(DMR: Distributed Micro-Roughness)を施すことで、空気抵抗を最大43.6%低減できることを世界で初めて実証しました。
流体工学では、物体の表面を流れる流体との間に生じる抵抗が、効率を大きく低下させるため、「表面は滑らかなほど空気抵抗が小さくなる」とされてきました。ところが、研究グループは、目に見えないような微細で不規則な粗さを物体の表面につけることで、空気抵抗をほぼ半減できることを実証したのです。この微細な粗さは、境界層の厚さのわずか1.0%というものです。境界層というのは物体の表面を流れる流体の速度勾配(変化)のある部分で、通常数ミリメートルの厚さしかありません。
流体と物体との間に生じる空気抵抗は、層流域(空気が滑らかに流れている部分)が長いほど小さくなります。そこで高速機では層流翼という薄い断面の翼を用います。層流はある地点(遷移点)まで流れると慣性力を失って乱流に変わります。この乱流が大きな抵抗となります。そのため表面をツルツルにしておけば、層流域が長くなり抵抗が軽減すると長らく考えられてきたのです。
研究グループはこの「流体力学における常識」をひっくり返し、超微細な凹凸をつけることで層流域を伸ばし、空気抵抗を大幅に減らせることを実証したのです。ただこのわずかな凹凸の効果を確認するには、支持物による干渉のない状態が必要です。支持物がついていると空気の流れを乱すため、うまく測定できません。そこで、研究グループは東北大学流体科学研究所が所有する世界最大級の1m磁力支持天秤装置を使いました。これは、電磁力で全長約1.07 mの流線型模型を風洞内に非接触で浮遊させ、支持物を排除した状態で測定できるものです。
DRM技術は、可動部や電力を必要としないため、製造コストを抑えながら、高い抵抗低減効果を獲得できるため、航空機、自動車、船舶、新幹線など、あらゆる輸送機器への応用が考えられます。
将来、飛行機・船・電車などは、ますます省燃費・省電力になっているかもしれません。


【参考】
■東北大学プレスリリース
1.0%の微細粗さで空気抵抗43.6%低減を世界で初実証 ―流体工学80年の常識を覆す発見、航空機などの省エネに期待―

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。

