生命を育む液体の水があるかも?! ハビタブルゾーンにあるスーパーアースを発見
(2022年10月01日)
恒星の手前を惑星が通り過ぎることによって、周期的に暗くなる現象を観測することで、LP890-9に2つの惑星があることが明らかになりました。外側にある惑星は水が液体になる「ハビタブルゾーン」にあることも明らかになっています。©自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター/MuSCATチーム
地球に生命が存在できるのは液体の水が存在するからです。太陽から適度に離れたところを公転していることで、地球の水は気体の水蒸気にも、固体の氷にもならず、液体であることで生命を育むことができたのです。このような水が液体になれる領域は「ハビタブルゾーン」と呼ばれており、ほかの恒星系でもハビタブルゾーン内に惑星があれば、地球と同じように生命がいる可能性があります。
そのため世界中の多くの研究機関で、生命がいる可能性を求めて太陽系外の惑星(系外惑星)の探索が取り組まれていますが、恒星と違って自ら光を発することのない惑星を見つけることは決して簡単なことではありません。そこで系外惑星を探索する研究者は、恒星の手前を惑星が通過(トランジット)することに注目しました。惑星を直接観測できなくても、惑星が通りすぎることで恒星が周期的に暗くなれば、系外惑星がある証拠になるでしょう。
こうした「トランジット法」が確立されたことで、これまで数多くの系外惑星が発見されてきましたが、この程、東京大学大学院総合文化研究科と自然科学研究機構アストロバイオロジーセンターなどの研究グループが、太陽系から約100光年の距離にある恒星LP 890-9に2つの惑星があり、そのうちの一つはハビタブルゾーン内にあると発表しました。
LP 890-9の惑星については、NASAのトランジット惑星探索衛星(TESS)によって発見され、2021年7月21日に公表されていました。ただし、LP 890-9が周期的に暗くなる現象は、二つの恒星(連星)がお互いに隠しあう「食連星」でも起こりうるため、日本の研究グループがハワイにあるハレアカラ観測所とすばる望遠鏡で詳細な観測を実施。LP 890-9には間違いなく惑星が存在することを確認しました。さらにベルギーの研究グループの観測により、最初に見つかった惑星とは別の惑星によって暗くなることも確認。LP 890-9には2つの惑星が存在することが分かりました。
発見された2つの惑星は、いずれも半径が地球の1.3倍ほど大きな「スーパーアース」であることも明らかになっています。こうしたスーパーアースは、地球のような岩石惑星である可能性が高く、しかも、外側の惑星は液体の水が存在するハビタブルゾーンにあるといいます。液体の水があって、生命がいると期待したくなりますが、LP 890-9の惑星は発見されたばかり。そこに生命が存在しているかどうかまでは明らかになっていません。今後、大気にどのような元素が含まれているか、雲ができているかなどを調べることで、地球外生命がいるか可能性を見出せるかもしれません。
【参考】
斉藤 勝司(さいとう かつじ)
サイエンスライター。大阪府出身。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業。最先端科学技術、次世代医療、環境問題などを取材し、科学雑誌を中心に紹介している。