地球エネルギー吸収急増の原因はエルニーニョとラニーニャ だった
(2026年4月01日)
2022~23年に観測された世界全体の平均気温の急上昇に関係していたのは、3年にわたって続いていたラニーニャ現象がエルニーニョ現象に遷移したことが原因であると示されました。

東京大学先端科学技術研究センターの土田 耕 特任研究員と小坂 優 准教授、北海道大学大学院理学研究院の見延 庄士郎 教授の研究グループは、多数の気候モデルのシミュレーションによって得られた2,000年以上のデータを分析することによって、地球のエネルギー上昇のメカニズムを解明しました。地球温暖化は、工業の発展とともに人類が排出するCO2等の温室効果ガスの増加が原因とされていますが、人為的な要因の他に自然環境の変異による影響を加えることで、より正確に気候変動を予測できるようになります。
地球は太陽の熱放射を吸収するとともに、宇宙空間へ赤外放射として熱を放出してエネルギーのバランスを保っています。しかし、吸収量が放出量を上回る状態が続くと地球は温暖化します。最近では、2022~23年にかけての気温上昇が急激であったことが知られています。
研究グループは、世界中の研究機関が共通の設定で気候モデルシミュレーションを行ってデータを公開している「第6次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)」による多数の気候モデルのデータを分析することで、今回の気温上昇の解明に取り組みました。その結果、複数年にわたって継続するラニーニャがエルニーニョに変わるタイミングで、エネルギー吸収の急増が起こっていることがわかりました。エルニーニョとは赤道付近の太平洋東方の海面水温が上昇すること、ラニーニャは逆に低下する現象のことで、大気の循環に大きな影響を与え、気候分布を変化させます。日本付近では、エルニーニョが発生すると、暖冬・冷夏になるといわれています。
研究グループは、エルニーニョ・ラニーニャが地球全体のエネルギー収支に影響を与えていると考えました。特に今回のように3年間も連続したラニーニャが、エルニーニョに遷移した場合に気温上昇が激しいということがわかったことは新しい知見であり、今後、地球規模で起こる極端気象や気候変動の予測に役立つと考えられています。
【参考】
■東京大学プレスリリース
2022~2023年に観測された地球エネルギー吸収の急増の要因を解明―3年続いたラニーニャ現象からエルニーニョ現象への遷移がカギ―

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。

