[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

わかる科学

全地球の大気と雲を220mの超高解像度でシミュレーションした

(2026年11月01日)

 東京大学大気海洋研究所の松岸 修平 特任研究員、佐藤 正樹 教授、大野 知紀 助教らの研究グループは、全球非静力学大気モデル(NICAM)を用いて、水平格子間隔3.5kmから220mまで段階的に細かくした全球大気シミュレーションを行いました。

 スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を使って、最大水平格子間隔220mという超高解像度で全球の大気シミュレーションを行うことで、従来モデルの解像度870mに対して、より精密に大気の運動をシミュレーションすることができました。このような超高解像度の計算を行うには、強力な計算機資源が必要となりますが、今回は「富岳」を活用することで実現しました。天気予報や気候予測に用いられる大気モデルでは、地球の大気を多数の格子に分割し、それぞれの格子における風、気温、水蒸気、雲などの時間変化を計算します。計算のもとになる格子間隔が小さければ小さいほど精度が向上します。

図1:水平格子間隔3.5kmと220mのシミュレーションで表現された降水の比較。太平洋上の一部領域の分布(上段)、赤線の鉛直断面における鉛直風速度(下段)
(Matsugishi et al. 2026 Geophysical Research Lettersを基に改変CC BY-NC 4.0)

 では、220mの超高解像度シミュレーションで、新たに分かったことは何でしょうか。従来の粗いスケールのシミュレーションでは、強い雨域が局所的に集中しすぎて表現され、実際の現象とはかけ離れていたのですが、今回のシミュレーションでは、降水強度がより現実に近い状態で再現されました。

 もう一つは、積乱雲内部の上昇気流や下降気流の構造の細部が再現できたことで、対流による水蒸気と熱の移送を詳しく表現できたことです。また、雲の再現には、小さな渦である乱流の表現の仕方によって大きく変化することがわかったといいます。下層雲の量は高解像度にするにしたがって減少し、上層雲は乱流の状況によって変化しました。この課題を解決するためには、物理モデルの改良が必要であると研究グループは考えています。

 今回の研究成果は、近年、日本各地に深刻な被害をもたらしている、豪雨による水害や気候変動の高精度な予測に役立つと考えられます。同時に高解像度化だけでは解決できない課題もあることがわかり、次の研究課題も明らかになったといえます。

図2:下層雲量、上層雲量の解像度・乱流スキーム(MYNN・SMG0)依存性。
(Matsugishi et al. 2026 Geophysical Research Lettersを基に改変CC BY-NC 4.0)

 

【東京大学プレスリリース】
・世界最高解像度の全球大気シミュレーションで雲を捉える -220mの細かさで見えてきた雲と降水の姿と課題-

サイエンスライター・白鳥 敬(しらとり けい)
1953年生まれ。科学技術分野のライター。月刊「子供の科学」等に毎号執筆。
科学者と文系の普通の人たちをつなぐ仕事をしたいと考えています。