ダイズのプロテオームデータベースを公開:作物研究所

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所は7月29日、ダイズ植物体のタンパク質を、生育時期別、部位別、細胞小器官別に抽出・解析して、ダイズプロテオームデータベースを構築、公開したと発表した。
 プロテオームとは、対象とする組織内に存在する全タンパク質のこと。今回のダイズプロテオームデータベースは、「http://proteome.dc.affrc.go.jp/Soybean/」のサイトで、英語版で公開している。日本語版もいずれ作成する計画。
 日本で消費されるダイズは、その95%を輸入に頼っており、国内生産の増大が望まれている。しかし、国内生産のダイズは、その大部分(約85%)が水田転換畑での栽培で、湿害が生産性低下の大きな要因となっており、耐湿性品種の開発が求められている。
 湿害とは、梅雨の長雨や水はけの悪い水田転換畑で作物を栽培する際に、土壌が過湿状態になると、土壌中の酸素濃度の低下、土壌の還元化による有毒物質の生成などにより、植物が生育障害を受けることをいう。新しい耐湿性品種の開発には、耐湿性遺伝子の解明が重要な役割を果たすが、耐湿性のような様々な要因が関係している形質では、耐湿性遺伝子を見つけることは難しく未だに特定されていない。
 今回の研究では、タンパク質の解析から遺伝子情報に迫る手法であるプロテオ―ム解析を用いることで、候補遺伝子を効率的に探索できるようになった。
 ダイズプロテオームデータベースでは、二次元電気泳動と呼ばれるタンパク質分析方法を基盤とした技術を用いて、ダイズの植物体のタンパク質を、生育時期の各種器官(種子、根、胚軸、葉など)別、部位別、細胞内小器官(細胞膜、細胞壁、葉緑体など)別にカタログ化しており、個々のタンパク質の性質や、類似のタンパク質を簡単に検索できる。既に500種類をデータベースに収録している。
 このデータベースを用いることによって、ダイズ生育初期の湿害発生に関与する複数の遺伝子候補が特定できた。今後、ダイズの湿害発生機構の解明に大きく貢献するものと期待されている。
 なお、ダイズプロテオームデータベースは、三菱スペース・ソフトウエア(株)との共同研究で開発された。

詳しくはこちら