世界初「イッテルビウム光格子時計」を開発、誤差60万年に1秒:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は7月29日、イッテルビウム(Yb)原子を使った「光格子時計」を世界で初めて開発したと発表した。60万年の間に僅か1秒の誤差しか発生せず、さらに精度アップが可能で、原理的には宇宙年齢の137億年間動かし続けても誤差1秒以下の時計が実現できるという。今年6月にパリ郊外の国際度量衡局で開かれた「メートル条約関連会議」で時間標準候補の1つに採択された。
 現在、1秒は、セシウム原子が放出する光の振動数を利用したセシウム原子時計で定義されているが、より高い振動数の光を利用すれば、より高精度の原子時計を作ることができる。原子時計は、原子中の電子の振動を振り子として利用する時計で、光格子時計も原子時計の一種だが、1秒の精度を現在のセシウム原子時計より15桁から18桁もアップできるといわれている。
 このため、現在世界各国の研究機関で光格子時計の開発が行われており、既にストロンチウム原子を使った光格子時計が誕生している。
 イッテルビウム原子を使う光格子時計は、ストロンチウム光格子時計の性能をしのぐ可能性のあることがこれまでも理論的に指摘されていたが、光源の開発が難しいため実現していなかった。  
 今回の研究は、(独)科学技術振興機構のチーム型研究(CREST)の一つとして行われ、独自の光源開発で壁を突破、誤差が60万年に1秒という「イッテルビウム光格子時計」を実現した。
 同研究所は、さらに精度と信頼性を向上させ、標準器としての完成度を高めると共に、国際比較のために必要なポータブル光格子時計の開発を進めるとしている。

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イッテルビウム原子が発する蛍光(提供:産業技術総合研究所)