半導体人工分子の量子状態を測定する方法を開発
:産業技術総合研究所/科学技術振興機構/東北大学電気通信研究所

 (独)産業技術総合研究所は7月21日、(独)科学技術振興機構、東北大学電気通信研究所と共同でガリウムヒ素(GaAs)を用いた半導体人工分子の量子状態を電気的に測定する方法を開発したと発表した。
 電子は、電気的な性質である“電荷”のほかに、磁気的性質の“電子スピン”を併せ持っている。近年、この電子スピンをエレクトロニクスに取り入れる「スピントロニクス」と呼ばれる試みが注目を集めている。特に、半導体で作られた人工的な原子(半導体人工原子)や分子(半導体人工分子)に閉じ込められた電子は、将来の量子コンピューターや量子暗号通信など量子情報処理デバイスへの応用が期待されている。
 共同研究では、ガリウムヒ素半導体でできたナノ(ナノは10億分の1)メートルスケールの箱である量子ドットに、電子1個を閉じ込めた半導体人工原子を作り、半導体人工原子2個を結合した半導体人工分子を作製した。さらに、二重量子ドットと呼ばれる2つの量子ドットが結合した微細構造の中で、閉じ込められた2つの電子のスピン(回転)状態の量子力学的重ね合わせ(同時に生じる2つの状態)を電気的に測定する方法を理論的に開発した。
 今回の方法を利用することで、2つの電子スピンの量子力学的な状態を完全に測定することが可能になった。
研究グループは、電子スピンを利用した量子ビットの実用化に向けた研究を、さらに進めることにしている。
 この研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載される。

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