中国・四川大地震の震源断層を推定
:防災科学技術研究所/構造計画研究所

 (独)防災科学技術研究所は5月11日、(株)構造計画研究所と共同で、昨年5月12日に発生した中国四川省の四川大地震に伴う地表断層について数回にわたって詳細な調査を行い、震源の断層の推定をしたと発表した。
 内陸地震としては最大級(マグニチュード7.9)ともいわれるこの地震は、中国では「汶川(ウェンチュアン、ぶんせん)地震」と呼ばれている。地震が発生した四川省汶川は、標高5000m級の山が連なるチベット高原から標高500m前後の四川盆地へと急激に標高が低くなる地帯で、龍門山脈の下を走る龍門山断層と呼ばれる断層帯の一部が破壊され、広い地域に甚大な被害をもたらした。
 両研究所が昨年の6月4日~15日と10月3日~9日に行った現地調査では、龍門山断層帯(全長約500km)の一部で、西側の山間部にある映秀―北川断層帯では約140kmの間に、東側の成都平野に隣接する灌県―安県断層帯では約70kmの間に、明瞭な地表断層が10カ所以上あるのを確認した。その内、映秀―北川断層帯では、最大6mの断層の縦ずれ(上下方向)、灌県―安県断層帯では最大2mの縦ずれをそれぞれ確認した。
 今回の調査と他の研究者による調査の結果を合わせると、映秀―北川断層帯では映秀から青川の間、灌県―安県断層帯では白鹿から漢旺の間に明瞭な地表断層が現れていることが確認された。これらのことから今回の地震では、約11~13km離れたほぼ平行する2つの断層帯が動いたことが分かった。
 震源断層の全貌を調べるために、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち」により観測された地震前後のPALSAR(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダー)のデータを用いて、震源断層の形状と断層面上の滑り分布を推定した。その結果、震源域とその周辺の広大な地域において地殻変動の全体像が明らかになった。
 推定断層モデルによれば、今回の地震では、映秀―北川断層帯では約290km、灌県―安県断層帯では約70kmの領域が大きく滑ったことが分かった。
 この研究成果は、AGU(米国地球物理学連合)の「Geophysical Research Letters」のオンライン版に4月28日掲載された。

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