日本実験棟「きぼう」使い宇宙で氷の結晶成長に成功
:宇宙航空研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月2日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の中で氷の結晶を成長させる科学実験を行い、地上からその結晶成長の様子を鮮明な画像で最初から最後まで捉えることに成功したと発表した。これだけ鮮明な氷の結晶成長の様子が観察された(写真)のは世界でも初めてという。
 氷の結晶ができる過程(結晶成長過程)は複雑で、でき方の詳しい仕組みについてはまだ分かっていない部分がある。その結晶成長過程を詳しく調べるには、結晶周辺の水の温度分布とその時間変化を正確に計測しないとならず、流れのない安定した環境が必要になる。
 しかし、氷が成長する時には、「潜熱」と呼ばれる熱が発生するため、重力のある地上では水に対流が生じ氷周辺の環境が乱れてしまう。
 今回の実験は、ISSならではの無重力に近い環境を利用し、「きぼう」に搭載されている北海道大学低温科学研究所・古川義純教授らが開発した実験装置を同教授らがJAXA筑波宇宙センター(茨城・つくば市)から遠隔操作して行われた。
 古川教授は、1998年にロケットで生じる無重力状態を利用して世界で初めて宇宙環境で氷の結晶を成長させた実績を持つ。同教授は、「ISSでは無限の無重力時間が得られるので、100回でも200回でも繰り返し実験を行うことができる」とし、JAXAは2009年3月頃までこの実験を継続する。 
 「きぼう」での科学実験は、これが2例目。

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ISS内の無重力に近い環境で得た氷の結晶の拡大写真(提供:宇宙航空研究開発機構)