大気圧以上の加圧下で使える新CO2吸着材を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は12月4日、大気圧以上の圧力領域で、大量の二酸化炭素(CO2)の吸着・脱着(放出)が可能な高性能無機系吸着材を開発したと発表した。
 大量に排出されるCO2を回収するシステムとしては現在、圧力スイング吸着法(PSA)という手法が主に使用され、CO2の回収・分離にゼオライトが用いられている。
 しかし、ゼオライト系吸着材では、真空から大気圧までの圧力領域での吸着量が多い上、放出する時には真空近くまで減圧しなければならず、コスト高につながるために、大気圧以上で多量のCO2の吸着と脱着の両方が可能な吸着材が求められていた。
 同研究所では、これまで、土壌中に存在する粘土鉱物の一種「イモゴライト」(外径約2.5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)、内径同1nmの超微細なチューブ状アルミニウムケイ酸塩)に注目し、その水蒸気吸着性能などを調べてきた。
 今回、安価なケイ素源とアルミニウム源を混合して中和し、一日加熱するだけで新しい吸着材を合成できる方法を見出し、部分的にイモゴライト構造をもつ非晶質アルミニウムケイ酸からなる高性能な無機系CO2吸着材を開発した。
 この新吸着材は、無機系なので300ºC程度の耐熱性を有している。大気圧以上の圧力領域では、圧力を高めるとCO2の吸着量が増加し、大気圧から10気圧の圧力範囲でのCO2吸着量は、ゼオライトの2倍以上であった。また、大気圧まで圧力を下げると、吸着したCO2のほとんどを放出し、繰り返して利用することができる。
 開発したCO2吸着材は、大量生産が可能で、合成コストも市販のゼオライトと同じレベルまで低コスト化が可能と推測されている。
 同研究所は、今後、この吸着材の性能の研究とあわせて新規用途の開発を目指した研究も進めていくことにしている。

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新開発のCO2吸着材(提供:産業技術総合研究所)