繁殖和牛の周年放牧を可能にする農地の合理的利用法を開発:農業・食品産業技術総合研究機構

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センターは11月5日、飼料稲生産と放牧を組み合わせた農地管理と、繁殖和牛(妊娠確認牛)を年間通して周年放牧する方式を、茨城県常総市の生産者と共に開発したと発表した。
 この方式では、電気牧柵(ワイヤー状の牧柵で、人体に危険のない程度の高圧・極少量電流を流して家畜の行動を制御する装置)を使って牛の行動を制御しながら、春から夏は牧草で放牧、夏から秋は栽培した飼料稲を収穫せずにそのまま直接与える(立毛放牧)。さらに冬期間には、収穫後に発酵粗飼料化した飼料稲を放牧地で与えることにより水田での周年放牧が可能になる。
 中央農業総合研究センターでは、常総市で畜産農家や水田作農家と共にこの方式のモデルケースの開発に取り組んでいる。これまでに延べ約1万8,000頭、最近1年間では約1万2,000頭の繁殖和牛を放牧している。
 モデルケースでは、経費を要する飼料稲の効率的な利用に取り組み、飼料稲を収穫・利用するコストを約5分の1に削減した。また、畜産農家は、家畜の飼育頭数を増やしながら労働時間を減らすと共に飼料の自給率が上がった。水田作の農家は、転作実施面積の拡大と、6ha(ヘクタール、1haは1万m2)以上の遊休農地の解消を実現した。
 この方式は、家畜の増産や農林地の資源保全コストの低減を図る有効な技術として注目され、今後の普及が期待されている。

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