(独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構は11月5日、毒性の低い元素だけで構成された鉄系の新超電導物質を発見したと発表した。
2008年初頭、東京工業大学の細野秀雄教授のグループによって初めて鉄系の超電導物質が発見され、以来短期間の内に類似化合物で次々と超電導体が見つかり、これまでの銅系超電導体に代わって鉄系超電導体が高温超電導体の新たな鉱脈として注目を浴びている。
しかし、発見された鉄系超電導体は、鉄・ヒ素、鉄・リン、鉄・セレンなど、そのほとんどが、ヒ素やリン、セレンなど毒性の高い元素を含んでおり、毒性の低い元素だけからなる鉄系超電導体の発見が望まれていた。
物材機構のナノフロンティア材料グループは、結晶構造が鉄・セレンに良く似た鉄・テルル化合物に着目した。
同グループは、これまでに鉄系超電導体の中で最もシンプルな結晶構造を持つ鉄・セレン化合物の超電導転移温度(電気抵抗がゼロの超電導状態になる温度)が1.5万気圧の圧力を加え結晶格子を縮めると、劇的に高くなることを見つけており、鉄・テルルも何らかの方法で結晶格子を縮めれば超電導体になるのでは、と考えた。
そこで、テルルの一部(約20%)をイオン半径の小さな硫黄に置き換え、結晶格子を縮めたところ、マイナス263ºCで超電導を示すことを発見した。
この鉄・テルル系超電導体は、毒性の高い元素を含まないため研究開発も容易になり、今後は超電導線材の開発などにも取り組む方針。
この研究は、科学技術振興機構の「戦略的創造研究推進事業」の一環として行われた。
No.2008-43
2008年11月3日~2008年11月9日