(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月24日、月周回衛星「かぐや」搭載の地形カメラで月の南極近くの「シャックルトンクレーター」内部の画像撮影に世界で初めて成功したと発表した。「かぐや」は、高度約100kmで月を周回飛行中で、撮影に成功した画像と論文が10月23日(米国時間)に発行された米国の科学誌「サイエンス」のオンライン版に掲載された。論文によると、クレーター底部表面の「永久影」と呼ばれる太陽からの光が1年を通して全く当たらない場所に水氷が露出した形で多量に存在する可能性はないことが明らかになった。 シャックルトンクレーターは、月の南緯89.9度、東経0度にある直径21kmのクレーター。南極点に近いので、ほとんど日光が当たらず、極低温となるため、内部に永久影があり、1994年に打ち上げられた米国のクレメンタイン衛星のレーダー実験で水氷の存在が示唆されていた。また、1998年に打ち上げられた米国のルナープロスペクター衛星の観測から、南極域に水素の濃集を示唆するデータも得られていたが、水素が水氷の形をしているかどうかは分からなかった。 シャックルトンクレーターの内部を撮影出来るチャンスは、太陽の散乱光が内部を照らす月の南極の夏季の数日しかない。「かぐや」が今回クレーターの内部を撮影したのは、観測機器の性能確認期間中の昨年11月19日だった。その地形情報から、クレーター内部はマイナス183ºC以下の極低温で、水氷が有るとすれば40億年で数cmしか昇華していないはずなのに、クレーター内部に水氷らしい反射率の高い場所は見当たらなかった。 こうした理由から、JAXAの論文はクレーター底表面に水氷が露出した形で多量に存在する可能性は無く、仮に有ったとしても、非常に少量が土に混ざっているか、土に隠れてしまっていると思われる、としている。また、データの解析で、シャックルトンクレーターの深さは4.2kmで、直径6.6kmの同心円状の平らな底があり、斜面に幾つかの小クレーターが見られ、中央に200~300mの小さい丘があること、なども分かった。 詳しくはこちら |  |
「かぐや」搭載の地形カメラがとらえた「シャックルトンクレーター」(提供:宇宙航空研究開発機構) |
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