J-PARCの中性子回折実験装置が世界最高の分解能を達成
:J-PARCセンター

 高エネルギー加速器研究機構(KEK)と(独)日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で運営するJ-PARCセンターは7月17日、今年12月の一部施設利用開始目指して調整運転中の大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験装置(MLF)の超高分解能粉末中性子回折装置「SuperHRPD」が世界最高の分解能0.037%を達成したと発表した。
 「SuperHRPD」は、MLFの中性子利用ビームラインに設置された実験装置で、粉末にした物質に様々な角度からパルス状の中性子を照射、通過する中性子線の強さを解析することで、物質中の原子の位置や並びなどを調べる装置。その数値が小さいほど、解像度が高いことを意味する。「SuperHRPD」の分解能は、機器調整過程の今年6月末に達成していたことをデータ検証の結果、確認した。この分解能は、英国ラザフォード・アップルトン研究所の同種装置の0.05%を上回っている。
 この成果は、KEKとJAEAの高性能パルス中性子源技術と、約100mもある長尺ビームラインで中性子を輸送する技術(中性子の走る距離が長いほど、中性子速度が精密に計れるので、それだけ分解能の高い実験が可能になる)、高性能計測技術を結集することで得られた。  
 「SuperHRPD」は,世界有数の高性能実験装置として、マルチフェロイック物質(誘電性や磁性などを併せもつ物質)や、金属にも絶縁体にもなる特異性質を持つ「強相関電子系物質」などに関する最先端の物質構造科学研究への貢献が期待される。

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