(独)産業技術総合研究所は7月16日、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)から成る非シリコン系の「CIGS半導体太陽電池」のエネルギー変換効率を飛躍的に高める技術を開発、セラミックスを基板とするフレキシブルな薄膜太陽電池としては、これまで最高のエネルギー変換効率17.7%を達成したと発表した。CIGS半導体の光吸収層に太陽電池の性能向上に欠かせないアルカリ金属を添加する新技術を産み出したことが、この高効率を実現した。 光電変換層の厚さを数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の薄さに出来るCIGS半導体太陽電池は、1974年に米国のベル研究所が発表した。現在では、実用段階に入っており、我が国でもパネル型太陽電池モジュールが量産販売されているが、このタイプのエネルギー変換効率の最高は米国の19.9%。しかし、これは基板材料がガラスで、フレキシブルなものではない。 フレキシブルなCIGS半導体太陽電池の性能向上に不可欠なアルカリ金属の光吸収層への添加法は、色々試みられてきたが、アルカリ化合物の物性的不安定性から、再現性良く行うことが出来なかった。 産総研は、光吸収層の下の裏面電極層を作る前に基板の上に安定したアルカリ化合物であるケイ酸ガラス層を形成、この層の製膜条件によって裏面電極層を通過して光吸収層に取り込まれるアルカリ量を制御する技術(ASTL法)を開発した。 これで、CIGS半導体の光吸収層に、再現性良く、簡便にアルカリ金属を添加することが可能になった。産総研では、ASTL法を用いて、セラミックス基板の他にもフレキシブル太陽電池を作っており、表面がやや粗いチタン箔基板のものでエネルギー変換効率17.4%、製膜温度を低くしなければならない軽くて絶縁体で安価なポリマー基板でも製膜温度400ºCで同14.7%を達成している。 この研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の太陽光発電システム未来技術研究開発「CIGS太陽電池の高性能化技術の研究開発」(平成18~22年度)の支援を得て行われた。 詳しくはこちら |
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セラミックス基板を使ったフレキシブルCIGS太陽電池(提供:産業技術総合研究所) |
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