(独)森林総合研究所は9月10日、小笠原諸島に固有のハナバチである「オガサワラコハキリバチ」の行動を観察し、オスのハチも花の雄しべから雌しべに花粉を運ぶ花粉媒介の役割をしていることを明らかにしたと発表した。
ハナバチ類では、メスが花粉と蜜の両方を集めて植物の受粉に主要な役割を果たし、オスは蜜を吸うだけで花粉を集めないとされていた。しかし、陸域から遠く離れ独自の生態系を持つ小笠原諸島では、花粉媒介の昆虫の種類が少ないため、オスの役割が相対的に大きくなっている可能性があると考えられていた。このため研究チームは、小笠原諸島固有のハナバチの一種オガサワラコハキリバチが多い無人島(兄島)でオスの行動を調べた。
オガサワラコハキリバチは、体長1cmに満たない小型のハナバチで、兄島では6月頃にムニンヒメツバキという固有植物の花を頻繁に訪れている。実験では、ムニンヒメツバキの花の中心に、オガサワラコハキリバチの標本や他種の昆虫の標本などを設置し、それぞれの花にハチがどのように訪れるかを観察した。
その結果、オスのハチは、他の昆虫の標本などを置いた花を明らかに頻繁に訪れており、訪花行動は他の昆虫の存在によって促進されることが分かった。このような行動を示すオスの体に、花粉が付着していることも分かった。この実験で、オスは花の上でパトロールし縄張り行動をしながら花を訪れ、その際に花粉媒介をしていることが明らかになった。
この研究成果は、ドイツの自然科学誌「Naturwissenshaften」の94巻8号に掲載された。
No.2007-36
2007年9月10日~2007年9月16日