(独)農業生物資源研究所とクミアイ化学工業(株)は9月13日、イネがもともと持っている遺伝子を意図した通りにピンポイントで改変することに成功し、これまでにない高度な除草剤耐性を示すイネを作り出したと発表した。
植物の品種改良は、これまで近縁種の掛合せによる交雑育種や、放射線や化学物質を利用した突然変異育種によって進められてきたが、近年分子遺伝学的手法の進展により、農業上有用な形質を支配する変異がDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列レベルでできるようになった。
今回の研究では、まずイネの培養細胞から、突然変異により除草剤ビスピリバックNa塩(BS)に対して耐性を示す遺伝子(変異型ALS)を取り出した。この除草剤に強い遺伝子を、「ジーンターゲッティング」という手法を用いて、イネの染色体上で除草剤に弱い遺伝子があった位置に入れ替えるように導入した。その結果、BSに耐性を示すイネが66個体得られた。その約3分の2の個体では、目的の遺伝子のみが導入され、染色体上の他の部分には変化がおきていないことが明らかとなった。また、BSの耐性遺伝子を持つ次世代のイネも、除草剤(BS)に対して強い耐性を示した。
ジーンターゲッティング手法により、イネの遺伝子を破壊することではすでに成功例があるが、今回の研究ではイネの遺伝子に思いどおりの突然変異を導入することに成功し、この手法により作物の遺伝子をピンポイントで改良できることを示した。
このような改変方法で植物体の作出に成功した例は、作物では世界でもこれが初めて。
No.2007-36
2007年9月10日~2007年9月16日