厚みがナノスケールの無機物質製自立膜を作る新プロセスを開発
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は8月6日、シャボン膜を利用して厚みがナノスケールの無機物質製自立膜を製造する簡便なプロセスの開発に成功したと発表した。
 自立膜は、センサーや表示デバイスなどの基本的な構造要素となる部品である。特に、厚みがnm(ナノメートル「=1nmは10億分の1m)という極めて薄い自立膜は、金属や半導体の物性の解明などのために盛んに研究されるようになった。これまで厚みがミクロンからサブミクロンの自立膜は、一般に「フォトリゾグラフィー法」と呼ばれる方法で作製されてきたが、製造過程の煩雑さや製造コストなどの問題があって、安価で簡便なプロセスが求められていた。
 研究では、基板に配列した穴の内部に無機質の自立膜を形成するのに、超高真空下でも壊れないシャボン膜を利用した。
 シャボン膜は、界面活性分子(分子内に水になじみやすい部分(親水性基)となじみにくい部分(疎水性基)がある分子)の膜の間に薄い水の層があり、これが乾燥すると壊れてしまう。しかし、同機構では、特定の界面活性分子を用いてミクロンオーダー(1ミクロンは100万分の1m)の穴の内部にシャボン膜を形成すると、乾燥しても壊れないシャボン膜(乾燥泡膜:厚みは約3nm)が得られることを見つけていた。
 今回開発した方法は、基板に配列したミクロンオーダーの細孔の内部にシャボン膜を形成し、それを乾燥して極薄の有機自立膜を先ず作る。その上に、電子ビーム蒸着法などによって様々な無機物質を蒸着させるというもので、厚みが1~100nm程度の均質な無機物質製の自立膜を作製できる。
 この研究成果は、8月5日に英国の科学誌「Nature Materials」誌の電子版に掲載された。

詳しくはこちら