(独)農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所は8月9日、同機構果樹研究所の協力を得て日本酒の中にわずかに残る原料米のDNA(デオキシリボ核酸)を分析し、原料米の品種を判別する技術を開発したと発表した。ワイン原料のブドウの品種識別にも応用可能で、酒類原料の偽装表示を見破る方法として活用されそうだ。
日本酒には、麹菌や酵母のDNAが混ざっているほか、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:目標とする特定のDNAだけを短時間に大量に増やす反応)を阻害する成分が混在するため、DNAを用いる識別法ではこれまで原料米の品種判別は難しかった。
そこで、日本酒に混在するPCR阻害物質とDNAを分離するために、70%エタノールによる精製過程を加える方法や、麹菌や酵母などの発酵微生物由来のDNAを増幅させずに、原料米のDNAのみを増幅させる手法を開発した。
つまり、原料米の各品種に特有なDNA塩基配列のみを増幅させて原料米品種を判別することに成功したもので、世界初の成果。
市販の「コシヒカリ100%」と表示している日本酒からDNAを抽出精製し分析した例では、コシヒカリ特有のDNAが出現せず、原料米が100%コシヒカリではない可能性が示されたケースもあったという。
この技術は、ビールなどの醸造酒の原料植物判別にも応用できると研究陣は見ている。
No.2007-31
2007年8月6日~2007年8月12日