(独)農業生物資源研究所は8月8日、トマトの遺伝子「Tm-1」が、トマトモザイク病の病原体トマトモザイクウイルス(ToMV)の増殖を阻害する仕組みを解明したと発表した。
Tm-1遺伝子は、ToMVに対する抵抗性遺伝子として、トマトの近縁野生種からトマトに育種的に導入された。しかし、Tm-1遺伝子は、組み換え頻度が極端に低い染色体領域にあるために、実体はこれまで分かっていなかった。
今回の研究では、最初に試験管内の検査で、Tm-1遺伝子を持つトマトの活性を調べ、ToMVの複製を阻害する因子(分子量約8万のタンパク質)を見つけた。次ぎに、このタンパク質に対応する遺伝子を分離し、ToMVにかかりやすいトマト品種に導入したところ、ToMVが増殖できなくなることが分かった。また、遺伝解析により、この遺伝子はTm-1遺伝子と同じものであることも分かった。さらに、このTm-1タンパク質が、ToMVの複製に必要なタンパク質に結合することによりその働きを阻害することも明らかになった。
これまで知られている植物ウイルスの抵抗性遺伝子の多くは、ウイルスの感染を感知して自己防御反応を誘起するスイッチの役割を果していたが、今回のTm-1遺伝子産物(Tm-1タンパク質)のようにウイルスの複製を直接阻害する仕組みは初めての発見である。
この研究成果は、8月8日(日本時間)、米国科学アカデミー紀要のオンライン版に掲載された。
No.2007-31
2007年8月6日~2007年8月12日