広域的な光化学オキシダント汚染をシミュレーションで再現
:国立環境研究所/九州大学

 (独)国立環境研究所と九州大学は5月21日、5月8日から9日にかけ九州から東日本の広い範囲で光化学スモッグ注意報が発令された広域的な光化学オキシダント汚染について、数値シミュレーションによる再現に成功したと発表した。
 国立環境研究所は、これまでに九州大学、(独)海洋研究開発機構などと共同で、東アジア域の大気汚染の変化を再現できる化学輸送モデルを開発し、それを使って現在と将来の東アジアの大気環境の変化を明らかにしてきた。そのモデルは、気象モデルと大気中の化学反応を含む輸送モデルを組み合わせたもので、各国のエネルギー統計などに基づき算出した窒素酸化物などの排出量推計結果を用い、東アジア域の大気汚染状況を計算することができる。また、東アジア域の排出量の変化による日本の光化学オゾンの変化の様子も計算できる。
 環境研と九州大学の研究グループは、その化学輸送モデルを用いて5月上旬の東アジア域の大気汚染などのシミュレーションを行い、5月7日から9日にかけての高濃度オゾン域の形成と移動を解析した。その結果、東シナ海に位置する高気圧の北側の西風で、中国東岸から流れ出した汚染気塊が、朝鮮半島南部を経て、九州北部から東日本の広い範囲に高濃度のオゾン域を形成する様子が再現された。
 形成された光化学オキシダント注意報レベルに相当する汚染気塊のスケールは、東西500kmを越えるもので、中国国内の汚染物質のみでなく、韓国や日本国内の都市大気汚染の影響も受けていることが推測された。
 また、環境研は、現在開発中の「大気汚染予報システム」によってこれらの汚染を予測することにも成功した。今後、準備が整い次第、その予報結果を一般に公開する予定。

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