強磁性半導体のキュリー温度を制御する方法を開発
:筑波大学/物質・材料研究機構など

 筑波大学、(独)物質・材料研究機構などの研究グループは5月21日、強磁性半導体が強磁性になる温度(強磁性転移温度=キュリー温度)を制御する方法を開発したと発表した。
 半導体でありながら同時に磁石としての性質を持つ強磁性半導体は、将来のエレクトロニクスとして期待されているスピントロニクス(電子が持っている電荷とスピン(自転)の両方を利用するエレクトロニクス)を実現するために必須の材料と考えられている。
 発表では、テルル化亜鉛を母体半導体とし、これに磁性金属のクロムを5%添加した磁性半導体に、微量のヨウ素を混ぜることでキュリー温度が大きく上昇、最高で27ºCに達した。
 ヨウ素濃度でキュリー温度が大きく変化することが分ったので、研究グループは電子顕微鏡で磁性半導体結晶内部の原子配列を観測した。その結果、ヨウ素を混ぜたものには組成比10~40%のクロム原子が集まった20~40nm(ナノメートル=1nmは10億分の1m)大の結晶が形成されており、このナノ結晶のサイズが大きく、クロム濃度が高いほどキュリー温度は高いことが分った。
  研究グループは、ヨウ素を添加すると余分な電子が供給されてクロム原子同士の間に働く電気的引力が強くなってクロム原子が集まり、強磁性の微粒子として働くため、そのサイズが大きくなると試料全体のキュリー温度が上ると見ており、この結晶形成メカニズムは他の磁性半導体にも当てはまるとしている。
 キュリー温度の高いスピントロニクス材料が内外で探し求められていることから、新しい強磁性半導体開発への応用が期待される。