塗布法を用いた有機薄膜トランジスタのアレイ形成技術を開発:産業技術総合研究所/日立製作所/旭化成/光産業技術振興協会

 (独)産業技術総合研究所、は23日、低コストな塗布製法で有機薄膜トランジスタ(有機TFT)を並べて形成するアレイ形成技術を(株)日立製作所、旭化成(株)、(財)光産業技術振興協会と共同で開発したと発表した。
  究極の薄型ディスプレイとして、プラスチック基板を用いたシートディスプレイへの期待が高まっているが、従来、塗布製法で作る有機TFTは、半導体膜中に結晶粒界が数多く生成され、トランジスタ内を電荷が動く速度(移動度)が低下するという課題があった。
 新技術は、半導体膜材料にペンタセン(炭素と水素からなる化合物)の溶液を使い、基板の表面エネルギーを最適化した塗布製法で「半導体膜」を、触媒を混合した低温効果型のポリシラザン溶液を用いて「ゲート絶縁膜」を形成、またポリシラザン/樹脂/樹脂の3層構造の「保護膜」をそれぞれ形成するなど、塗布製法によって半導体の加工、液晶の積層時に発生する性能劣化を抑制している。
 開発した技術を用いて画面サイズ5インチの有機TFTアレイ(トランジスタ数:約23万個)を試作したところ、移動度は塗布製法で作製した有機TFTアレイとして最も高い性能が得られた。この移動度は、小型の液晶ディスプレイに利用可能な性能という。
 今回は、ガラス基板の上に形成したが、今後は形成温度を下げ、薄くて軽いプラスチック基板上に形成し、高品質な超薄型ディスプレイの開発をめざす。
 この研究は、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託で行われた。

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新開発の塗布製法で試作した有機薄膜トランジスタアレイ(提供:産業技術総合研究所)