(独)産業技術総合研究所は5月25日、市販の試薬を混合するだけの簡便な方法で有機電解質が一次元的に複数分子連なった構造を持つ新しい「有機電解質オリゴマー」を合成することに成功したと発表した。
今回開発した新しい有機電解質オリゴマーは、数%以下の少量の添加で様々な液体(水、有機溶媒、イオン液体)を固めることができるゲル化機能や、水に全く溶けない単層カーボンナノチューブを水に可溶化するなど色々な機能を合わせ持つ多機能物質で、様々な応用が期待される。
近年、ソフトマテリアルとして寒天状のゲルが、食品、化粧品、工業用粘結剤などの広い分野で使用されている。ゲル材料の多くは、寒天やゼラチンといった天然高分子によるハイドロゲルだが、これらのゲルは酸性にすると分解し、機能性溶媒として知られるイオン液体に溶解しないなど弱点があって、応用範囲などが限定されている。
このため、天然ゲルの性質を持ちながら、機能を充実させた合成ゲルの開発が進められてきたが、従来の合成ゲル化剤の多くは、多段階の合成ステップと煩雑な分離精製操作が必要で、工業化のために必要な大量合成には大きな課題が残されていた。
産総研では今後、有機電解質オリゴマーから得られるハイドロゲルや、イオンゲルの具体的な応用を目指すことにしている。ハイドロゲルの場合は、酸性廃液処理用の固化剤などへの用途が考えられる。イオンゲルの場合は、電気化学デバイス(たとえば、色素増感太陽電池)への展開を目指す予定。
No.2007-20
2007年5月21日~2007年5月27日